カメムシのあの強烈な匂いが辺りに漂っている。
伸び出したクズの若い蔓にその匂いの元凶がいた。
マルカメムシである。
食樹のクズの若芽が成長し始めるのに合わせて、冬眠から目覚めるのだろう。
茎ばかりでなく、展葉した若葉の上にも群れがいる。
まっすく一列になっている様が面白いのでカメラを向ける。
近くには半円になっているのもある。
マムカメムシが葉の表で群れている姿はあまり記憶に無いと
一通り写し終えてそんなことを考えた。
クズがブッシュになっている時期は、群落の中の茎や葉の裏に
群れているのを見る事が多いような気がする。
葉の表に姿を晒しているのは、
越冬明けの日光浴という特別なことなのだろうか。
それとも、それは勘違いで、クズが繁茂している夏場でも
葉の表に結構姿を見せているのかもしれない。
こんな普通種の昆虫の事でさえ、まともに観察していないのだと反省する。
カメムシの強烈な匂いだが、
これは天敵を驚かすためと、敵がいることを群れに知らせる警戒、
そして集合のためのフェロモンだという。
アリなどはこの匂いで死んでしまうという。
匂いが強ければ、止まっていた枝や葉からぽろぽろ落ちて群れは分散するが、
やがて匂いが弱まれば、今度はこれが集合のサインとなって、
再びカメムシは群れを作るのだそうだ。
ところがこのフェロモンは、マルカメムシのような
周りの環境に似せた隠蔽色のカメムシでは、
敵から逃げるサインとして働かないという。
確かに、派手な色彩のナガメなどは、
カメラを向けると蜘蛛の子を散らすように何処かへ逃げ去ってしまう。
だが、目の前のマルカメムシは、無防備に葉の上で静かに群れていて、
撮影を終える間ピクリともすることはなかった。
夏場、茎に止まる群れも、葉の裏の群れも、
茎や葉に手が触れても、やはり逃げることは無いように思う。
しかし、これもあいまいな記憶で、
本当かと言われると自信はあまりない。
確証の無いこれらのことを夏場に確かめてみようと今は記憶しているのだが、
果たして夏になってこの事を記憶しているだろうか。
記憶が薄れるのを強烈な匂いの所為にしたいのだが、
残念ながらそんな効果はないようである。
撮影:2011.5.4/TAMRON SP AF Di 90㎜ F2.8