棚田の脇の道を歩いていると、
ネザサに2㎝ほどの黒い昆虫が止まっていた。
頭はヘビトンボのようだが翅はトビケラのようでもある。
この少し変わった昆虫は、センブリ科のクロセンブリである。
幼虫は肉食性で、緩やかな流れの小川や池沼に棲み、
2月ごろ地上に上がって蛹になる。
西日本では、成虫は4月下旬頃羽化する。
水が温み始める頃に姿を見せる春を告げる昆虫といえるだろう。
幼虫期は肉食だが、成虫は花の花粉を食べるので、
水域を離れた草の葉などに止まる姿を見ることが出来る。
これに似た近縁種にヤマトセンブリがある。
こちらは古い図鑑には普通に見られると書かれているが、
現在は環境省のRDBに名を連ねているから、
最近は数がかなり少なくなっているのだろう。
クロセンブリはこれより一般的な種のようだが、
どこでも簡単に見られる訳ではない。
チョウやトンボなどのようなポピュラーな昆虫ではないが、
この変な姿形が何とも魅力的に思える。
同じく春を告げる昆虫であるのに、
ギフチョウなどの人気の昆虫の影で、
ほとんど見過ごされてしまいそうな里山の貴重な生きものに違いない。
撮影:2011.4.24/TAMRON SP AF Di 90㎜ F2.8