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Colocasia's Photo World

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偶然の産物?

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遅れていた里の紅葉だが、ようやく盛りに近づいたようだ。アベマキの大木からは時折枯葉が舞い散り、だんだんと落葉が進んでいく気配である。冬へと突き進むそんな山道は、新しい落ち葉がたっぷりと敷き詰められていて、歩くのが心地よい。
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林縁を覗くと、色づき始めたばかりのヤマハゼの小さな木で、シャクガの幼虫を見つけた。シャクガの幼虫は尺取虫としてお馴染みだ。中でもクワエダシャクは良く知られている。木の枝にそっくりの尺取虫だとは知らず、農夫が手に持っていた土瓶を掛けようとしたら、土瓶は下に落ちて割れてしまった。それでクワエダシャクの幼虫は「土瓶割」と呼ばれるのだそうだ。
写真の幼虫はこれと同じエダシャクの仲間のオオトビスジエダシャク。クワエダシャクの幼虫の体長は7㎝と巨大だが、こちらはその半分の3.5㎝と小振り。見た目は負けず劣らず小枝にそっくりだが、物を掛けるにはやや心もとないだろうから、土瓶を割ってしまうことはないだろう。
尺取虫は、人を騙して楽しんでいる訳では勿論ない。わが身を枝に似せるのは、捕食者から身を守るための擬態だといわれている。野山が緑葉に覆われている季節であれば、真剣に探しても一向に見つからないから、凄い擬態の名人だと感心する。しかし、枯木色の色彩は、木々の葉が赤や黄に美しく色を染める季節では、その地味な色彩がかえって良く目立って、さらにこの幼虫のように紅色の枝に止まっていたら、老眼に悩まされる私でさえ直ぐに目に留まってしまって、これが擬態かと首をかしげたくなる。
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昆虫はある特定の植物だけを餌にする種と、複数の種類の植物を餌する種とがある。このオオトビスジエダシャクは驚くほど多様な植物を餌にしている。裸子植物のイチョウから単子葉植物のアヤメ科の植物までと、これ程の食指の広さは他にあまり例がないだろう。広葉樹もコナラ、ネムノキ、ヒサカキ・・・と挙げれば限がない。ではなぜ目の前の尺取虫はわざわざ?目立つ場所で餌を食べているのだろう。冬でも緑の葉に覆われている照葉樹で過ごせば、天敵に見つからずに良いだろうにと御節介をいいたくなる。
擬態は捕食者を欺くために進化したとされるのだが、こんな情景を目のあたりにすると、単なる偶然の産物かもしれないと思えて来る。そんな懐疑の眼で見られているとも知らず、無防備な尺取虫は無心にヤマハゼの葉を食べ続けているのだった。
撮影:2011.12.05 / NIKKOR ED70-180mm F4.5-5.6D
*クリックで画像は少し拡大します。
by escu_lenta_05 | 2011-12-06 16:59 |
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