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野を焼く少年の昂り


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野の草が芽吹きはじめる間際の今、
晴れ間が続き枯れ草がすっかり乾ききった頃合いを見計らって、
畦や草原に火が放たれる。

赤い炎は、立ち上る灰色の煙を従えながら、
地を舐めるように風下に向かって広がり、
灰褐色の枯野を見る間に黒々とした焼野に変貌させて行く。

侘びしく蕭然とした枯野は、メランコリーで詩的な趣に満ちているが、
どこか貧相で、くたびれ果てたような古草が、
勢いよく燃えさかり、一瞬にして漆黒の世界が出現するのを見ていると、
鬱々とした季節を一気に吹き払ってくれるようで、爽快な心持ちになってくる。

安東次男は『花づとめ』の中で、「野や山を焼きに行った。・・・
春立つ気配を拱手してただ待っているのが厭だったのである。」と、
雪の降った節分の翌日(立春に)、
枯れ草や枯れ木が濡れて燃えるはずがないと家人に笑われながらも、
春を先取りしたくて野を焼きに出た少年の頃の心情をその詩評集に書いている。
屍のような枯草を焼く行為は、あらゆる過去を見事に清算し、
新たな希望を奮い立たせるのかもしれない。

春雨のそぼ降る末黒野に立ってみた。
焼け跡は一層黒々として、地をしっかりと包んでいた。
全ては雨水もろとも地の中に染み渡り、目覚めたばかりの草木の芽に行き渡る。
少年を昂らせた炎などもうそこにはなかった。
[Canon EOS20D EF16-35mm F2.8L]

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by escu_lenta_05 | 2007-02-22 06:08 | 俳句
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